正絹着物を、外国の方にも。しろくまきものが追求したユニバーサルデザイン
原点は、「外国の方にも正絹を纏ってほしい」という想いから
しろくまきものの商品開発の出発点は、一つの想いでした。日本文化である正絹着物の美しさを、外国の方にも体験してほしい。着物を着たことがない外国の方にも、正絹の光沢や職人が織り上げた柄の奥行きを、実際に纏うことで感じてほしい。その想いが、すべての始まりでした。
しかし、正絹の着物には高い壁があります。着付けには専門的な知識と技術が必要で、経験のない方が一人で着用することは容易ではありません。「着てみたい」という気持ちがあっても、その壁の前で諦めてしまう外国の方が数多くいる現実がありました。
「着付けの経験がない外国の方でも、一人で簡単に着られるようにしたい」
その問いが、しろくまきものの商品開発を動かしていきました。
「セパレートにすれば簡単」ではなかった
最初に考えたのが、着物を上下に分けるセパレート構造です。しかし、上下に分けるだけでは、着付けの難しさは解消されませんでした。紐を結ぶ工程、前合わせを自分で調整する工程。着物の知識がない外国の方にとって、それらは依然として高いハードルでした。
そこでしろくまきものが追求したのは、複雑な工程をできる限りなくすことです。上着を羽織るだけで衿合わせが自然に整い、着物の正しい前合わせが自動的に完成する構造。下衣は巻くだけで着用できる設計。紐を結ぶ必要も、合わせ方を自分で調整する必要もない。正絹の美しさや着物としての品格を損なわないまま、着ることの難しさだけをなくしていく。その両立を追求した結果、ワンタッチで着用できる構造が生まれました。
帯にも、現代の暮らしへの配慮を
着物本体と同様に、帯の設計にも工夫を重ねました。従来の帯は複雑な結び方を必要とするため、着付けの知識がない外国の方が一人で着用することは難しいものです。しろくまきもののスマート帯は、ベルトのように胴まわりへ巻き付け、面ファスナーで留めるだけ。帯を結ぶ技術は必要ありません。
帯の設計では、外国の方の生活様式も踏まえた工夫を施しています。椅子に座り、背もたれにもたれることが日常的な外国の方にとって、背中側に厚みのある一般的な帯結びは、苦しさや身体への負担につながることがあります。スマート帯では、背中側にできるだけ厚みを持たせない構造にすることで、椅子の背もたれに身体を自然に預けても苦しくなりにくい設計にしました。
面ファスナーやアタッチメントの接続部分は帯飾りの裏に隠れるため、正面からその存在はまったくわかりません。正絹の光沢、職人が織り上げた柄の奥行き。その美しさはそのままに、着脱のしやすさと快適さを両立しています。
追求した結果が、ユニバーサルデザインへとつながった
着付けの経験がない外国の方でも、一人で簡単に着用できる仕様を追求し続けた結果、約5分で着用できる着物が生まれました。
そしてこの設計が、思いがけない広がりをもたらしました。立った状態での着付けだけを前提としない構造。複雑な結び方や強い締め付けを必要としない帯。座ったままでも上着と下衣を別々に着用できるセパレート設計。これらが組み合わさることで、車いすを利用している方でも、少しのサポートがあれば着用していただけることがわかったのです。
最初から車いすの方向けに開発した商品ではありません。「正絹着物を外国の方にも着てほしい」という想いから始まり、「一人で簡単に着られるようにしたい」という課題に向き合い続けた結果として、着用できる方の範囲が自然と広がっていきました。それが、しろくまきものが結果としてたどり着いた、ユニバーサルデザインのかたちです。
「着てみたい」という気持ちに、応えたい
しろくまきものが目指しているのは、正絹着物の美しさと日本文化の魅力を、できる限り多くの方に届けることです。着付けの経験、体型、国籍、身体の状態。それらを理由に「着られない」と諦めなくてもいい着物を作ること。その積み重ねが、結果としてユニバーサルなデザインへとつながっています。
身体の状態や介助の必要性によって、着用方法は異なります。すべての方に同じ体験をお届けできるわけではありませんが、一人でも多くの方が正絹着物と出会い、その美しさに触れる機会をつくっていく。それが、しろくまきものがこだわり続ける理由です。
すべての着物に、物語がある。すべての想いに、未来がある。